前回、骨粗しょう症(骨粗鬆症)の予防「カルシウム編」として、骨の材料となるカルシウムについてお話ししましたが、今回はそのカルシウムを骨へ取り込む働きをする「ビタミンD』に焦点を当てて紹介します。屋内で過ごす時間が長い方ほどビタミンD不足に陥りやすい点にも注意が必要です。
ビタミンDは、小腸でのカルシウム吸収を高め、血液中のカルシウム濃度を安定させることで骨を健康に保つ脂溶性ビタミンです。
体内のビタミンDは「食事」と「日光」から得ることができます。厚生労働省が定める成人の目安量は1日9㎍ですが、晴れた日の正午前後に顔と手を15分~20分ほど日光に当てるだけで、皮膚で約5~10㎍相当が合成できるとされています。つまり、日光浴が十分に取れる日は目安量の大半をまかなうことができます。
一方で、冬季や梅雨時、紫外線対策で日焼け止めを常用する場合は合成量が大きく低下するため、魚やきのこなど食事から残りの分を補う工夫が欠かせません。
今回は普段の食卓に取り入れやすい食品を中心に、目安量と含有量をまとめました。
食品 |
目安量 |
ビタミンD量 |
焼き鮭 |
80g(切り身1枚) |
25.6㎍ |
さんまの塩焼き |
100g(1尾) |
14.9㎍ |
さば缶(水煮) |
100g |
11.0㎍ |
卵黄 |
1個 |
2.0㎍ |
乾燥きくらげ |
2g(約2枚) |
1.7 |
干ししいたけ |
6g(5cm大のもの2枚) |
0.8㎍ |
魚介類はビタミンDとカルシウムを同時に補うことができ、きのこ類は天日干しすると含有量が大幅に増加するため効率的です。卵黄やビタミンD強化乳製品を組み合わせれば、忙しい日でも不足分を手軽に補えるでしょう。脂溶性ビタミンであるため、油を使った調理や乳製品と合わせると吸収率がさらに高まります。
ビタミン D が不足すると、血中カルシウムを補うために骨からカルシウムが溶け出し、骨量減少が進みます。逆に十分な量を確保できれば、カルシウムが効率良く骨へ届き、骨粗しょう症や骨折の一次予防につながります。
サプリメントで補う場合は、長期にわたる過剰摂取(100 µg/日超)が続くと高カルシウム血症や腎結石のリスクがあるため、医師や管理栄養士に相談のうえ用量を守りましょう。
骨密度は 20 歳前後でピークを迎え、その後緩やかに低下しますが、ビタミン D とカルシウムを十分に摂り、適度な運動を続けることで減少スピードを抑えられます。当院では骨密度検査を実施し、結果に基づいた食事指導や薬物療法をご提案しています。少しでも気になる症状があればお気軽にご相談ください。次回は、カルシウムの骨への定着を助けるビタミンK編をお届けします。
京都市下京区 西七条の整形外科
やまかわ整形外科・リハビリクリニック
山川 智